『スメルズライクグリーンスピリット』第6話では、夢野の本心がついに明かされ、物語は大きな転機を迎えます。
フトシへの恋心を爆発させた夢野は、キス、告白、そして大胆な行動に出ますが、その裏にあったのは“幻想と現実”のギャップでした。
本記事では「スメルズライクグリーンスピリット 夢野」の視点から、恋愛・性・多様性・青春のすれ違いを描いたこのエピソードを深掘りしていきます。
この記事を読むとわかること
- 夢野がフトシに抱いた感情の正体とその暴走の理由
- キスから“ズボンを脱がせる”展開が示す感情の崩壊
- 桐野・フトシ・夢野それぞれの内面と交錯する想い
Contents
夢野が明かした本心とフトシへの想い
第6話で明かされた夢野の告白は、物語の空気を一変させました。
これまでいじわるだった彼が、まさかフトシに恋心を抱いていたとは、視聴者にも衝撃的だったはずです。
それは単なる思春期の感情ではなく、“幻想”と“現実”の狭間で揺れる、夢野の心の叫びでもありました。
ずっと気になっていた“窓際のフトシ”
夢野はこれまで、フトシに対して冷たく接してきたように見えました。
しかし彼が打ち明けたのは、「いつも窓の外をぼんやり眺めてるフトシが気になってた」という想いでした。
そこには、フトシの持つ幻想的な雰囲気や、現実に属していないような儚さへの惹かれがありました。
夢野は“誰にも触れられないもの”に恋をしてしまったのかもしれません。
イジメと恋心が交差する矛盾した行動
しかし夢野がとった行動は、恋愛とは正反対のものでした。
「ずっと触れてみたかった」という言葉のあとに続いたのは、イジメというかたちの接触。
髪を切ったり、冷たくあたったりという行為は、自分の感情を処理しきれなかった夢野の未熟さを物語っています。
その矛盾した行動の先にあった「ごめん」と「好き」は、痛みと優しさが入り混じった真実の言葉だったのでしょう。
現実に打ちのめされたフトシとその傷
夢野の思いがけない行動によって、フトシは深く傷つくことになります。
彼にとっては、“人との距離が急に詰まった”どころか、自分という存在の扱われ方を見せつけられる出来事でもありました。
この章では、そんなフトシの心情の揺れと、それでも強くあろうとする姿勢に注目します。
“幻想的”だと思われていたことの残酷さ
フトシは夢野から、「まるで漫画のキャラみたいだった」「きれいすぎて怖かった」という言葉をぶつけられます。
それは褒め言葉ではなく、“現実としては扱われていなかった”という残酷な認識の表れです。
自分は恋愛の対象として見られたのではなく、ただの幻想だったのだと知った瞬間、フトシは完全に心を閉ざします。
この展開は、思春期の“アイデンティティの否定”という痛みに直結するものでした。
傷つきながらも強がるフトシの心情
その後のフトシは、誰とも目を合わせず、感情を表に出さなくなります。
それは“もう期待しない”という諦めと、自分を守るための防御だったのでしょう。
しかし視聴者には、そんなフトシの静かな強さと、自分を保つ必死さがしっかりと伝わります。
幻想を壊され、拒絶され、それでもなお“自分”を保とうとするフトシの姿は、思春期の傷と成長の象徴といえます。
桐野の優しさが支えるフトシと夢野の間
夢野の暴走と、フトシの傷をきっかけに、もう一人の重要なキャラクター桐野が再び物語の中心に浮かび上がります。
これまで冷静で中立に見えた桐野ですが、実は誰よりも他人の気持ちを察し、優しさで包む存在でした。
この章では、そんな桐野の言葉と行動に込められた意味をひも解きます。
夢野の本音を聞き涙する桐野の変化
夢野は自分のしたことの重さに気づき、桐野にすがるように本音を打ち明けます。
「あたし、あいつを壊しちゃったかもしれない」――その言葉を受け止めた桐野は、思わず涙をこぼすのです。
それは、夢野の気持ちだけでなく、フトシが傷ついた事実も桐野の胸に突き刺さったから。
桐野の涙には、“わかりたいのに届かない”もどかしさと、三人の心が交錯する切なさがにじんでいます。
桐野とフトシ、静かな抱擁に込められた共感
ラストシーン、桐野は無言でフトシを優しく抱きしめます。
それは言葉以上に力強く、「あなたの痛みはここにある」という共感の表れでした。
桐野自身も家庭やジェンダーの悩みを抱える中で、フトシの孤独に誰よりも寄り添える存在となっていきます。
あの抱擁は、傷ついた心と心が確かに繋がった瞬間を象徴しているのです。
BL的展開の先にある、“恋愛”の不完全さ
『スメルズライクグリーンスピリット』は一見するとBL的な構図に見える展開を描きますが、その本質は恋愛の理想と現実のギャップを丁寧に掘り下げている点にあります。
夢野の想いも、フトシの傷も、桐野の抱擁も――どれもが“誰かを完全に理解することの難しさ”を描いています。
恋ではなく幻想への依存だった夢野
夢野が抱いていたのは、フトシ自身というより、“理想化されたフトシ”への憧れでした。
静かで美しい、どこか現実離れした存在に惹かれる気持ちは、恋というよりも依存に近かったのかもしれません。
その幻想が壊れたとき、夢野は向き合うべき“人間のフトシ”を受け止められず、逃げ出してしまいます。
拒絶でも否定でもない、“理解されない切なさ”
フトシの側にとっても、それは拒絶というよりも「自分という存在がちゃんと見られていなかった」という寂しさでした。
そこには、傷つけ合いたくないという想いも、相手を否定しない優しさもあります。
ただ、想いが届かない、わかり合えないという“不完全さ”が残るのです。
それでも、そんな不完全さこそが青春のリアルであり、物語の深さを形作っているのです。
この記事のまとめ
- 夢野の恋は幻想への憧れと依存が交差する複雑な感情だった
- キスと“ズボンを脱がせる”行動は理想の崩壊を象徴している
- 桐野の静かな抱擁は、言葉を超えた共感と理解の表現だった